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ハイターについて徹底解説!使うコツから成分の科学まで

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ハイターについて徹底解説!使うコツから成分の科学まで

ハイターは安くて簡単に使えて、優れた漂白作用を持ちます。

手軽に使えるハイターですが、より効果的に使うには、成分や漂白のしくみを知っておくと役立つことでしょう。

この記事では化学の専門的知識を持つ筆者が、ハイターの成分や使い方のポイント、漂白の原理について詳しく解説します。

ハイターとは?含まれる成分と漂白の原理・仕組み

この章では、ハイターの成分の性質や役割を紹介し、漂白の原理や仕組みも解説します。

ハイターの成分まとめ

ハイターとは、「次亜塩素酸ナトリウム」を有効成分とする花王の塩素系漂白剤です。漂白や消臭、殺菌などの用途に利用できます。

純粋な次亜塩素酸ナトリウム(固体)は非常に不安定な物質で、固体状態での流通は不可能です。水に溶かした水溶液が、ハイターとして売られます。

ハイターの成分としては他に、次亜塩素酸ナトリウムを安定化する「水酸化ナトリウム」と、キッチンハイターには洗浄力を補助する「界面活性剤」も含まれます。

ハイターに含まれる成分を下表にまとめます(溶媒である水を除く)。

ハイターの成分表
成分 次亜塩素酸ナトリウム 水酸化ナトリウム 界面活性剤
役割 漂白剤 アルカリ剤
(安定剤)
洗浄補助剤
備考 濃度6%程度
(製造時)
pH13程度に調製 キッチンハイターに添加

各成分について解説します。

成分①次亜塩素酸ナトリウム(漂白成分)

ハイターの漂白剤としての有効成分は次亜塩素酸ナトリウムです。

次亜塩素酸ナトリウムとは、化学式NaClOで示される化合物で、水溶液は漂白、洗浄、脱臭、殺菌作用を持ちます。

これらの作用は主に、次亜塩素酸ナトリウムの「酸化剤」としての性質に起因します。他の物質を酸化する力を持ち、化学反応によって汚れを分解したり、殺菌したりできるのです。

ハイターやキッチンハイターの製造時には通常、次亜塩素酸ナトリウム濃度が6%になるよう作られています(製品やメーカーにより異なる場合あり)。

ただし、次亜塩素酸ナトリウムは流通や保管中に、非常にゆっくりと分解して濃度が低下します。分解を少なく抑えるには、冷暗所での保管(できれば15℃以下)が有効です。

次亜塩素酸ナトリウムには色と臭いがあり、ハイターの原液はごく淡い黄緑色で、特有の臭い(いわゆる塩素臭)がします。

成分②水酸化ナトリウム(アルカリ剤)

水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)は、次亜塩素酸ナトリウムの分解を防ぐため、アルカリ剤としてハイターに混合される成分です。

水酸化ナトリウムの混合により、ハイターはpH13程度の強アルカリ性を示します。

次亜塩素酸ナトリウムは酸性では急速に分解し、有害な塩素ガスを発生します。一方、アルカリ性では分解が非常に遅いうえ、分解時にも塩素ガスが発生しません。

水酸化ナトリウムにより、ハイターを安全に長期間保管できるのです。

使用時にも、微量の酸が混入しても水酸化ナトリウムで中和され、有害ガス発生のリスクを小さく抑えられます。※故意に酸を混ぜてはいけません!

成分③界面活性剤(キッチンハイターに配合)

「ハイター」と「キッチンハイター」の違いは、界面活性剤の配合の有無です。キッチンハイターには界面活性剤が添加されていて、漂白と同時に洗浄が行えます。

界面活性剤とは、石けんや中性洗剤のように、水に溶けにくい汚れを包み込んで落とす力を持つ成分です。

ハイターとキッチンハイターの違いは?

ハイターと違い、キッチンハイターには界面活性剤が配合されています。そのため、キッチンハイターは漂白だけでなく、軽い洗浄まで同時に行えます。

ハイターとキッチンハイターの違い
ハイター
  • 界面活性剤を含まない
  • 漂白が主な目的
キッチンハイター
  • 界面活性剤を含む
  • 漂白と同時に軽い洗浄が可能

衣料用の「ハイター」には、界面活性剤が添加されていません。洗濯用洗剤と併用するか、つけ置き漂白とは別に洗濯することを想定した製品です。

一方、キッチンハイターは界面活性剤配合で、漂白と同時に軽い洗浄を行えます。ここでの洗浄とは、汚れを包み込んで落とすことです。

ハイターとキッチンハイターのどちらも、漂白や殺菌作用に大きな違いはありません。

ただし界面活性剤には、水が持つ「汚れの深部に浸透しにくい性質(大きな表面張力)」を改善する働きがあります。界面活性剤入りのキッチンハイターの方が、しっかりと漂白・洗浄作用を発揮することも多いのです。

メーカー推奨の使用方法ではないものの、衣料用とキッチン用は、互いに使い回しも不可能ではありません。筆者は、どちらの用途もキッチンハイター(またはキッチンブリーチ)で済ませます。

また、衣料用の「ハイター」使用時に台所用洗剤を少量添加すれば、キッチンハイターに近い性質をもった代用品にもなります。

ハイター(次亜塩素酸ナトリウム)による漂白の原理・仕組み

ハイターに含まれる次亜塩素酸ナトリウムは、タンパク質や脂質のほか、様々な有機物を「酸化」という化学反応で分解します。

家庭でのガンコな汚れは、皮脂汚れやタンパク汚れ、食べ物の汚れなど、生き物の作り出す有機物が中心です。ハイターは、汚れの原因である有機物を分解することで、漂白や消臭作用と、間接的に洗浄作用を発揮します。

ハイターが作用する原理・仕組み
ハイターによる漂白の原理・仕組み
  • 色を持つ化合物(色素)を酸化・分解する
  • 分解された色素は色が消えるか薄くなる
ハイターによる消臭の原理・仕組み
  • 臭いの原因物質を酸化・分解する
  • 臭いを作り出す雑菌も殺菌して臭いを防ぐ
ハイターによる洗浄の原理・仕組み
  • 分解後の汚れ物質は水に溶けやすくなることも多い
  • 目に見えなくなっただけで物質はまだ付着していることもある

ハイターの効果的な使い方と注意点

この章では、ハイター使用時の注意点と、効果的に使う方法を解説します。

混ぜてはいけないものは?ハイターの注意点・危険性

ハイター使用時の一番の注意点は、塩素ガスを発生させないことです。

ハイターと酸が混ざり酸性になると、急速に次亜塩素酸ナトリウムが分解し、毒性の強い塩素ガスが発生します。

注意点は他にもあるため、安全利用のためのリストをまとめます。

ハイターを安全に使うために
塩素ガス発生対策
  • 酸性のもの(酸性洗剤・クエン酸など)と混ぜない
  • 使用時は換気する
  • 食酢や多量の生ゴミとも混ぜない
  • アルコールとも混ぜない
ハイターとの接触を避ける対策
  • 皮膚にも触れないように注意する
  • 触れてしまったら流水でよく洗い流す
  • 手袋やメガネなどの保護具を適宜使う

ハイターと混合厳禁なものは、トイレ洗剤やクエン酸などの酸性の洗剤が代表的ですが、それだけに限りません。

食べ物には、アルカリ性のものは少ないですが、酸性のものは多数存在します。生ゴミも酸性の場合があり、ハイターと混ざらないように注意が必要です。

掃除や除菌に使うこともある「アルコール」は盲点となりがちです。ハイターと混ざらないよう気をつけましょう。

ハイターが身体に付かないようにも注意しましょう。漂白剤は、身体を作るタンパク質などを分解します。特に、目に入ると重篤な事態にもなり得るので、液はねなどにも注意すべきです。

ハイターなど次亜塩素酸ナトリウム系洗剤の使用時は、製品の注意書きをよく読んでください。

ハイターの効果的な使用方法

ハイターの漂白・殺菌効果を十分に発揮するには、簡単に落ちる汚れを前もって落とすことが重要です。

次亜塩素酸ナトリウムは、タンパク質や色素など、汚れの原因物質を分解します。その過程で、ハイター中の次亜塩素酸ナトリウムも消費されます。汚れが大量にあると、通常のハイター使用量では分解しきれません。

汚れがひどいものは、洗濯機や手洗いの後に、落ちない汚れをハイターで漂白しましょう。

ハイターで落ちる汚れ・落ちない汚れ

ハイターには強い漂白力がありますが、どんな汚れも落とせるわけではありません。

ご家庭では、ハイターで落とせる汚れは「生き物由来の汚れ」と考えると、よい目安になるでしょう。タンパク質や炭水化物のほか、動植物が作り出す色素などが該当します。

ハイターで落ちやすい汚れと落ちにくい汚れについて、それぞれの例を挙げます。

ハイターで落とせる汚れ・落ちにくい汚れ
ハイターで落とせる汚れ
  • 汗による衣類の黄ばみ(タンパク質が中心)
  • 衣類の生乾き臭(雑菌が原因)
  • 食べ物による染み・茶渋などの固着物
  • ヌメリのある水あか・カビ
ハイターで落としにくい汚れ

泥汚れ
鉄さび
化粧品の汚れ
うろこ状の水あか(ミネラルが原因)

ただし、生き物由来の汚れでも、油汚れ中心なら例外です。次に詳しく説明します。

ハイターで油汚れは落ちる?

油汚れを落としたいなら、ハイターでなく、ほかの洗剤や洗浄方法が適しています。

ハイターは油汚れ(油脂)を分解できるものの、洗浄の効率はよくありません。多量の油汚れを落とすには、お湯や界面活性剤(中性洗剤や石鹸など)のほか、多量のアルカリ性物質を使うと効果的です。

一口に「油汚れ」と言っても、植物油や動物性脂肪が付着しているだけのケースもあれば、時間経過により「重合」してガンコな油汚れになっているケースもあります。

「重合」とは、小さな分子同士がたくさん連結して大きな分子をつくる化学反応です。この重合が起こるために、時間が経った油汚れは、サラサラな油ではなくなってしまうのです。

油汚れの洗浄方法を、油の状態別に表にまとめます。

油汚れの種類と洗浄方法
油汚れの種類 普通の油汚れ 重合した油汚れ
油の状態 液体・サラサラ
  • 高粘性の液体や固体
  • ベトベト・ギトギト
時間経過 汚れてすぐ 長時間経過
洗浄の指針
  • 洗い流す
  • ふき取る
化学的に分解
物理的にそぎ落とす
洗浄に有効
  • 界面活性剤
  • お湯
  • アルカリ性物質
  • 酵素配合洗剤
  • アルカリ性物質
  • 界面活性剤
おすすめ洗浄方法 紙などで拭き取った後
お湯と洗剤で洗う
セスキ炭酸ソーダや過炭酸Naを
お湯に溶かして浸け置き

産業の製造現場では、ひどい油汚れには強アルカリ性の洗剤を用います。

ご家庭では、セスキ炭酸ソーダや過炭酸ナトリウムが便利です。特に「過炭酸ナトリウム」なら油汚れだけでなく、タンパク質の分解や除菌も同時にできるため、ぜひ活用してほしい漂白剤です。

価格も、安い商品ならキロ単価500円以下で購入でき、コストパフォーマンスも抜群です。

ギトギトの油汚れが付いたものには過炭酸ナトリウムを使い、次のような手順でのつけ置き洗いをおすすめします。

過炭酸ナトリウムを使った油汚れの落とし方
    容器に40~50℃程度のお湯を張る 油汚れを落としたい物を沈める 台所用洗剤少量と過炭酸ナトリウムを投入 過炭酸ナトリウムの溶解に時間がかかるので1時間以上放置

過炭酸ナトリウム使用量はお湯1Lに対し大さじ2~3杯が目安
油汚れがひどければ過炭酸ナトリウムとつけ置き時間を増やす
つけ置き中は泡がたくさん発生する

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ハイターが使えないもの・素材・材質

ハイターの次亜塩素酸ナトリウムは物質を酸化し、水酸化ナトリウムは強いアルカリ性を示します。

こうした性質のため、身の回りにはハイターが使えないもの・素材が多く存在します。ハイターが使えないもののうち、代表例を列挙します。

ハイターが使えないもの
ハイターが使えない衣類・布製品
色柄物や酸化・アルカリに弱い繊維のもの

色柄物:酸化作用で色素が分解され色落ち・変色する
毛・絹製品:生地が縮んだり繊維が傷んだりする
ナイロン・アセテート・ポリウレタン:繊維が傷む
金属製ファスナー・ボタン付き衣類:金属が酸化され質感が損なわれる

ハイターが使えない食器など
耐薬品性に劣る素材のもの

金属製品(ステンレス以外):表面が酸化される
メラミン食器、漆器:素材が酸化され変質する
スポンジ:ポリウレタン製フォーム部分が耐薬品性に劣ることが多い

この他にも、水洗いできないものや、塩素系漂白剤が使えない旨が表記された製品にも、もちろんハイターは使えません。

主な繊維や樹脂のうち、ハイターが使えないものと耐久性が高いものは表のとおりです。

繊維・樹脂のハイターへの耐久性
ハイターが使えない ハイターへの耐久性が高い
天然繊維
  • 木綿
合成繊維
  • ナイロン
  • ポリウレタン
  • アセテート
  • ポリエステル
  • アクリル
樹脂
  • メラミン
  • ポリウレタン
  • 大部分のプラスチック(ナイロン含む
  • シリコーン

ハイターほか「次亜塩素酸ナトリウム系」の洗剤まとめ

ハイターの漂白成分である「次亜塩素酸ナトリウム」は、「ハイター」や「キッチンハイター」の他にも、何種類かの洗剤に配合されています。

この章では、次亜塩素酸ナトリウムが配合されている主要な洗剤について、それぞれの特徴や成分の違いを解説します。

次亜塩素酸ナトリウム系の洗剤一覧

「ハイター」は花王株式会社の商標です。他の企業では、次亜塩素酸ナトリウムを用いた洗剤を異なる商品名で販売しています。

花王とその他の企業が販売する、主な「次亜塩素酸ナトリウム系の洗剤」を下表にまとめます。

次亜塩素酸ナトリウム配合洗剤まとめ
洗剤の用途 衣類用 キッチン用 キッチン用
(泡タイプ)
カビ用
(泡タイプ)
パイプ清掃用
花王製品 ハイター キッチンハイター キッチン泡ハイター 強力カビハイター パイプハイター高粘度ジェル
他社製品 ブリーチ キッチンブリーチ キッチン泡ブリーチ カビキラーなど パイプユニッシュなど
次亜塩素酸
Na濃度
5~6%程度 5~6%程度 0.5~0.6%程度 0.5~0.6%程度 1%以下の製品が主流
その他の
成分や特徴
  • 白物衣類用
  • 最もシンプルな配合
界面活性剤配合
  • 界面活性剤配合
  • スプレータイプ
  • 界面活性剤配合
  • スプレータイプ
  • 界面活性剤配合
  • 強いアルカリ性
  • 高粘性
次亜塩素酸ナトリウム濃度は製造時の目安です。 製品の種類や保管状況により、表中の値と異なる場合もあります。

次亜塩素酸ナトリウム濃度は、希釈しての使用を想定したハイターやキッチンハイターでは高く、原液そのままで使用する製品では低く調製されています。

「ハイターとブリーチの違い」「カビキラーと泡ハイターの違い」「パイプクリーナーの特徴」を順に説明し、「どれを買うべきか」筆者のおすすめを紹介します。

ハイターとブリーチの違いは?

「ハイター」は花王の商標です。他の多くの企業は、ハイターに似た成分の漂白剤を「ブリーチ」として販売しています。

どちらも同等濃度の次亜塩素酸ナトリウムを有効成分とする漂白剤です。化学的観点からは、ハイターとブリーチに成分上の大きな違いはないといえるでしょう。

通常はハイターの方が価格が高いため、筆者はブリーチを選ぶことも多いです。

カビキラーの成分は?キッチン泡ハイターとの違いは?

ジョンソンが製造するカビ用洗剤「カビキラー」は、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、界面活性剤の3つが主成分です。

カビキラーの主成分の組み合わせはキッチン泡ハイターと同じで、次亜塩素酸ナトリウム濃度も同程度(0.5~0.6%)です。化学的観点からは、非常によく似た洗剤といえます。

筆者はカビキラーの代用として、キッチン泡ハイターを使うことも多いです。

ただしカビキラーには、浴室内使用時の快適性を考慮した香料添加や、泡が崩れにくい界面活性剤の使用など、細かな工夫もなされています。

「普段はキッチン泡ハイターで代用」「カビが多い時の大掃除にはカビキラーを購入」など、臨機応変に使い分けてもよいでしょう。

パイプユニッシュ(パイプクリーナー)の成分は?

「パイプユニッシュ」などのパイプクリーナーも、次亜塩素酸ナトリウムが配合されています。主成分はやはり「次亜塩素酸ナトリウム」「水酸化ナトリウム」「界面活性剤」の3つです。

主成分の組み合わせは同じでも、パイプクリーナーには、ハイターなどの漂白剤と大きく異なる点があります。髪の毛を溶かすために、水酸化ナトリウムが多く配合されているのです。

タンパク質でできた髪の毛は、強いアルカリ性溶液で分解されます。パイプクリーナーは漂白よりも、水酸化ナトリウム(強アルカリ)で髪の毛を溶かすことに重点を置いた洗剤です。

濃い水酸化ナトリウム水溶液へ、さらに次亜塩素酸ナトリウムを添加し、漂白を兼ねた洗浄ができるように製造されています。

パイプクリーナーをハイターで代用することは、成分の比率が大きく異なるため困難でしょう。

【結論】次亜塩素酸ナトリウム系洗剤はどれを買うべき?

たくさんある次亜塩素酸ナトリウム系洗剤のうち、どれがおすすめか、筆者の常備品を紹介します。それは、次の2種類です。

常備用におすすめの「次亜塩素酸ナトリウム系」洗剤2種類

キッチンハイター、もしくはキッチンブリーチ
キッチン泡ハイター、もしくはキッチン泡ブリーチ

「キッチンハイター」か「キッチンブリーチ」で、つけ置きなどの薄めて使う用途に対応できます。あくまで筆者の例ですが、衣料用にも使い回します。

「キッチン泡ハイター」か「キッチン泡ブリーチ」があれば、スプレータイプを使いたい場面で広く汎用性があります。カビキラーのような使い方もしています。

また、パイプ洗浄用にはパイプユニッシュなどのパイプクリーナー、パッキンのカビ用にゴムパッキン用カビキラーを使っています。これらは大掃除の際にのみ購入すれば、普段ストックする種類を減らせます。

ぜひ参考にして、スマートな掃除と収納にお役立てください。

ハイターの成分「次亜塩素酸ナトリウム」の化学

この最後の章では、より深く知りたい人に向け、ハイターの成分である次亜塩素酸ナトリウムの化学的な補足情報を書いています。

「次亜塩素酸」の性質・化学式・構造

次亜塩素酸ナトリウムは、「次亜塩素酸」という弱酸のナトリウム塩です。「次亜塩素酸ナトリウム」のことを知るには「次亜塩素酸」について知るとよいでしょう。

次亜塩素酸とは

化学式(組成式)HClOで示される化合物
実際にはH-O-Clの順に原子が結合
水分子(H-O-H)の水素1つが塩素に置き換わった構造
酸化力を持つ

次亜塩素酸は、次亜塩素酸ナトリウム(Na-O-Cl)と同じく酸化力を持ちます。これらの物質の酸化力は、塩素原子(Cl)が酸素原子(O)に結合した構造に起因するためです。

電子を引きつける力(電気陰性度)の大きな酸素原子に結合した塩素原子は、電子が不足した状態になります。

その電子不足な状態を解消しようと、他の物質から電子を奪い去る(酸化する)性質を持ちます。この性質こそ、次亜塩素酸の酸化力の本質です。

ハイターでの洗浄や漂白の際には、次亜塩素酸(や、そのイオン)の塩素原子が、他の物質から電子を奪うような化学反応を起こし、汚れや雑菌を分解するのです。

さて、次亜塩素酸(HClO)が、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)と反応すると、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)と水(H2O)になります。これは酸とアルカリの中和反応です。

次亜塩素酸ナトリウムの特徴と生成
次亜塩素酸と水酸化ナトリウムの中和で生成

H-O-Cl+Na-OH→Na-O-Cl+H-OH

次亜塩素酸ナトリウムとは

化学式(組成式)NaClOで示される化合物
水溶液では主にNa+とClO-のイオンとして存在
弱アルカリ性
ハイターの漂白成分

そして、次亜塩素酸ナトリウムの溶液を酸性にすると、再び次亜塩素酸に戻ります(ここでは塩素発生の話は置いておき次節で述べます)。

このように両物質を行ったり来たりでき、実際の溶液では、次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムの両方が共存しています。このような状態を「平衡」といいます。

その比(平衡の傾き)は溶液のpHに応じて変化し、アルカリ性溶液中では次亜塩素酸ナトリウムの割合が多く、酸性溶液中では次亜塩素酸の割合が多くなります。

両者の存在比が1:1になるのは、ほぼ中性のpH7.5です。

アルカリ性であるハイターでは、次亜塩素酸もわずかに存在しますが、大部分が次亜塩素酸ナトリウムとして(イオンになって)水に溶けています。

ハイター原液を水で希釈すると、pHがいくらか下がる(アルカリ性が弱くなる)ため、次亜塩素酸の"割合"はいくぶん増えます。

下表に、ここまでの概要をまとめます(イオン性物質の構造も簡略し表記)。

次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムの性質・構造
物質 次亜塩素酸 次亜塩素酸ナトリウム
化学式
(構造式)
H-O-Cl Na-O-Cl
pH(液性)
と平衡
酸性でより多く存在 アルカリ性でより多く存在
水溶液中では イオン化せずとも溶けている イオンとして溶けている

ハイターが危険になるpHはいくつ?

ハイター使用時は、酸との反応による塩素ガス発生に要注意です。しかし、微量の酸との混合でも、すぐに塩素ガスが発生するとは限りません。

ハイターや次亜塩素酸ナトリウムから有毒な塩素ガスが発生しはじめるのは、溶液のpHが5よりも酸性側に傾いた時です。

pHとは?

酸性やアルカリ性の度合いを数値で示す尺度

  • 強酸性の「0」から強アルカリ性の「14」まで連続的に変化 (この範囲に収まらない場合あり)
  • 中間の「7」が中性を示す
    ハイターのpHは?

    ハイターの原液は通常pH13程度
    水で薄めると溶液のアルカリ性の強さは低下
    水で薄めるだけでは中性や酸性にはならない

    ハイターの原液は、水酸化ナトリウムによりpH13程度の強アルカリ性に調製されています。使用時に水で薄めても、ある程度の強さのアルカリ性が保たれます。

    ハイター使用時に「意図せずほんのわずかに」酸が混ざっても、アルカリで中和され、簡単には酸性になりません。私たちは安全にハイターが利用できます。

    もちろん、多量の酸を混ぜると溶液が酸性になり、有毒な塩素ガスが発生します。酸性のものを故意に(もしくは意図せずとも多量に)ハイターに混ぜてはいけません。

    次亜塩素酸ナトリウム・ハイターと界面活性剤の併用

    界面活性剤(石けんや衣類用・台所用洗剤など)は通常、次亜塩素酸ナトリウムの持つ漂白力の強さに直接影響しません

    しかし例外もあります。洗浄液が、洗うものの隙間や表面になじみにくい場合です。水は表面張力が大きく、微小な隙間や、汚れの奥の方に浸透しにくい性質があります。

    表面張力とは
    • 液体の表面に働く「表面積を小さくしようとする力」の大きさ
    • 表面張力が大きい液体は「球状に丸まろうとする」ような挙動を取る
    • 表面張力が小さい液体は物体の表面や小さな隙間になじみやすい

    界面活性剤には、水の表面張力を小さくする働きがあります。洗浄液が汚れに浸透しやすくなり、次亜塩素酸ナトリウムの漂白・洗浄作用を助けることも多いのです。

    衣類用のハイターとは異なり、キッチンハイターには界面活性剤が配合されているため、単品でこの効果が得られます。

    まとめ・参考文献

    この記事では、ハイターについて詳細な解説をしました。

    ハイターは「次亜塩素酸ナトリウム」を有効成分とする漂白剤です。家庭用漂白力としては効き目が強く便利ですが、その分だけ危険性にも注意が必要です。

    分からないことや不安な点はしっかりと調べて、安全かつ効果的に使いましょう。