水の硬度を自動で計算!硬度の意味や計算式の導出方法も解説
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このページでは、水の硬度の自動計算ツールが利用できます。ミネラルウォーターのラベルなどに記載された、カルシウムとマグネシウムの含有量を入力するだけで、水の硬度を計算可能です。
さらに、水の硬度の定義や計算式の導き方も、一般の方へ向けて詳しく解説しています。
水の硬度計算ツール
水の硬度に関する計算を行える2種類のツールを設置しています。それぞれ、次のような計算が可能です。
- カルシウムとマグネシウム含有量から、水の硬度を計算する。
- アメリカ硬度とドイツ硬度の一方を、もう一方に換算する。
単に水の硬度を計算する場合は、一つ目の計算ツールをご利用ください。
本ページの計算ツールは、パソコンでもスマートフォンでも、多くのブラウザで利用可能です。ただし、JavaScriptが無効な環境では動作しません。
カルシウムとマグネシウム量から水の硬度を計算するツール
水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を入力して、「計算する」ボタンを押してください。水の硬度を算出し、「軟水・中硬水・硬水・非常な硬水」のいずれかに分類します。
計算結果と連動して、メーターの針がアニメーションし、硬度(総硬度)や分類が表示されます。計算結果の詳細は、入力エリアの下部に出力されるテキストで確認可能です。
単位を変更
アメリカ硬度⇄ドイツ硬度を相互に換算・変換するツール
アメリカ硬度とドイツ硬度を、相互に換算できます。換算モードを適宜選択して、硬度の値を入力し、計算ボタンを押してください。
日本では、主にアメリカ硬度が用いられています。アメリカ硬度はmg/Lやppmを、ドイツ硬度は°dHを単位とする硬度です。本ページで詳しく解説しています。
換算モードを変更
【補足】硬度による硬水・軟水などの分類基準や定義について
水は硬度に応じて、軟水や硬水などに分類されます。しかし、硬度の値による水の分類には、統一された定義や基準が存在するわけではありません。人により異なる基準で、軟水や硬水といった分類がなされている状況です。
本ページの計算ツールでは、WHO(世界保健機関)の資料でも言及された基準に従い、下表のように分類しています。この資料は、WHOの「飲料水水質ガイドライン」に付随する背景資料 (background document) です。
- 硬度による水の分類(WHOの資料中で言及された基準に基づく)
-
分類 CaCO3換算での硬度
(mg/L)軟水 60以下 中硬水 60を超えて120以下 硬水 120を超えて180以下 非常な硬水 180を超える
これは、多くの日本のウェブサイトで、「WHOによる分類
」「WHOの定義
」などと紹介されている基準です。しかし、先に挙げたWHOの資料には、以下の記述があります。
Water containing calcium carbonate at concentrations below 60 mg/l is generally considered as soft; 60–120 mg/l, moderately hard; 120–180 mg/l, hard; and more than 180 mg/l, very hard (McGowan, 2000).このように、WHOの資料中では、出典として書籍を挙げつつ、"
generally considered as soft"(一般的には軟らかいと見なされる)といった具合に紹介されているだけです。
出典となった書籍の出版者も、アメリカのイリノイ州に本拠を置く、水処理業者らの業界団体Water Quality Association(水質協会)であり、WHOとは異なる組織です。
つまり、筆者が調べた限りでは、WHOが自ら定めた基準や定義ではありません。ネット上に多い「WHOによる分類
」「WHOの定義
」といった表現は、語弊があることでしょう。
本記事では、WHOによる定義ではないことを明確にするため、「WHOの資料で言及された基準」「WHOの資料でも紹介されている基準」といった表現を用いています。
上記の表1で「以下」「~を超えて/超える」と訳している箇所は、多くのウェブサイトでは、「未満」「以上」と訳されています。些末な問題ではありますが、補足しておきます。
続きを読む
まず、"more than 180"は、「180より大きい」ことを示し、180ぴったりは含まれないので、「180以上」と訳すべきではありません。(ここでは以降、単位のmg/Lを省略します。)
次に、"more than"が使われていることを考慮すると、"below"は「以下」の意味で使われていると考えるのが自然でしょう。そうでなければ、60、120、180などの境界線ぴったりの値が、いずれの分類にも該当しなくなってしまいます。
そこで本ページでは、多くのウェブサイトの翻訳とは異なり、表1のように翻訳しました。
また、USGS(アメリカ地質調査所)の、水の硬度についてのウェブページでも、いくぶん表現が異なるものの、ほぼ同じ分類基準が記載されています。その内容は、下記のとおり、本ページでの翻訳と同等のものです。
整数値での硬度算出を前提にしているようですが、軟水が60までで、61からが中硬水、といった具合に書かれています。
60ぴったりは、軟水に入るので、やはり「60未満」ではなく「60以下」の訳が適切です。そして「60を超えて」、61からが、中硬水に分類されています。
水の硬度の意味・求め方・計算式の導き方を解説!
水の硬度は少し複雑な概念です。実際のところ、硬度の定義を正しく、かつ詳しく解説した一般向けのウェブページは、なかなか見つかりません。
この章では硬度の定義や計算式の導き方を、イラストなども使って詳細に解説します。
水の硬度の定義
水の硬度はカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の濃度から、以下の計算式で求められます(CaCO3に換算するアメリカ硬度の場合)。
硬度とは、水1リットルに含まれるカルシウムとマグネシウムの物質量の合計を、等しい物質量の炭酸カルシウム(CaCO3)の質量に換算して表した指標です。
つまり、水1L中のカルシウムとマグネシウムイオンの総量を、モル数で数えて、同じモル数の炭酸カルシウムの質量に換算して表したものといえます。
さらに別の表現をすれば、硬度の算出においては、次の2つの仮定がなされていると言えるでしょう。
- 硬度の算出における2つの仮定
-
- マグネシウムイオンは、同じ個数のカルシウムイオンに置き換えて考える。
- 水中のカルシウムイオンは、炭酸カルシウムとして存在すると考える。
続けて、「硬度とはどんな概念なのか」をもっと分かりやすく、イラストなども使って解説します。
硬度の意味を「数式を使わず」イラストで説明
生活用水や飲料水などの水には、様々な種類のイオンが含まれています(イオン性物質の他にも、微量の有機物などが含まれます)。
そのうち、代表的な(比較的多く含まれる)金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン(Na+, K+, Mg2+, Ca2+)の4種類が挙げられます。
金属イオンはプラスの電荷を持った陽イオンです。必ず、マイナスの電荷を持った陰イオンも一緒に溶けています。(下のイラストに、代表的なイオンを記載しました。)
こうしたイオンのうち、硬度の算出に用いるのは、カルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の濃度だけです。
それでは、水中のCa2+とMg2+だけに着目して、下のイラストのように2種類のイオンを含む水があったとします。一つの丸が、1個のイオンを表しています。
まず、1つ目の仮定です。マグネシウムイオンは、同数のカルシウムイオンへと置き換えて考えます。
次に2つ目の仮定を行います。マグネシウムイオンから置き換えた分も含め、全てのカルシウムイオンが、炭酸イオンCO32-と対になって、炭酸カルシウムとして存在するという仮定です。
そして、水1Lに含まれる、計算上の炭酸カルシウムの質量が、その水の硬度となります。
このように硬度は、カルシウムとマグネシウムイオンの実際の濃度をもとに、炭酸カルシウムに換算して算出されます。実際にその量の炭酸カルシウムが含まれているわけではないことには、注意が必要です。
水の硬度の計算式を導いてみよう
次に、硬度の計算式の導き方を説明します。
この硬度の計算式では、水1L中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの含有量が、同じ物質量(同じモル数)の炭酸カルシウムの質量へと換算されています。
換算を行うには下記の原子量や式量が必要です。計算式中の「2.497」「4.118」という係数も、これらの値の組み合わせに由来します。
- 硬度の計算に用いる原子量や式量
-
- カルシウム(Ca)
- 40.078
- マグネシウム(Mg)
- 24.305
- 炭酸カルシウム(CaCO3)
- 100.087
硬度の計算式の導き方を、下図に示します。
このように、硬度は本来、原子量や式量を代入して計算できます。
ただし、用いる原子量や式量はいつも同じです。そこで、「2.497」「4.118」という係数を予め算出しておいた簡略的な計算式が、一般に用いられています。
水の硬度の計算式に出てくる「2.497」や「4.118」という係数の部分は、以下の計算式のように、「2.5」や「4.1」と書かれている場合もあります。
硬度 (mg/L) = Ca濃度 (mg/L) × 2.5+ Mg濃度 (mg/L) × 4.1
低い精度では困る場合は、「2.497」と「4.118」の係数を用いた方がよいでしょう。
ちなみに、厚生労働省の「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法」にも、「2.497」と「4.118」の、有効数字4桁の係数を用いた計算式が記載されています。
総硬度 = カルシウム硬度 + マグネシウム硬度
硬度のうち、カルシウム濃度に由来するものを「カルシウム硬度」、マグネシウム濃度に由来するものを「マグネシウム硬度」と呼びます。
既述の硬度の計算式は2つの項から成りますが、カルシウム硬度とマグネシウム硬度は下記のとおり、それぞれの項に対応しています。
カルシウム硬度 (mg/L) ≒ Ca濃度 (mg/L) × 2.497
マグネシウム硬度 (mg/L) ≒ Mg濃度 (mg/L) × 4.118
また、カルシウム硬度とマグネシウム硬度を合わせた通常の硬度を「総硬度」や「全硬度」と呼びます。これらの関係を表したのが次式です。
一般に、単に「硬度」と言う場合は、総硬度のことを指しています。
水の硬度の単位「mg/L」と「ppm」は同じ意味
水の硬度(CaCO3換算のアメリカ硬度)の単位はmg/Lですが、ppmで表記される場合も多いです。例えば、100mg/Lを100ppmとも表しますが、どちらも同じ意味をもちます。
ppmは、parts per millionの略で、日本語では「百万分率」のことです。百分率である%(パーセント)と同じで、割合を表すために用います。1%が百分の一(1/100)を表すように、1ppmは百万分の一(1/1000000)のことです。
濃度が1mg/Lの水溶液1L中には、溶質(水に溶けている物質)が1mg含まれます。1mgは1/1000gです。
希薄な水溶液1Lの質量は、ほぼ1000gです。水溶液1000g中に、溶質が1/1000g溶けていたら、その割合は1/1000×1/1000で、百万分の一となります。つまり、1ppmであると見なせます。
ppmを用いる場合、例えば100ppm (mg/L) のように、ppmと単位を併記する表記法もあります。
ドイツ硬度の定義と計算方法
水の硬度の定義は、アメリカ硬度だけではありません。ドイツ硬度は、「°dH」を単位とする表し方で、日本でも昔は主流でした。
ドイツ硬度は、水に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度を、CaO(酸化カルシウム)に換算して、10mg/Lを1°dHとして定義されます。
次式が、簡略的なドイツ硬度の計算式です。
ドイツ硬度 (°dH) ≒ { Ca濃度 (mg/L) × 1.399 + Mg濃度 (mg/L) × 2.307 } × 1/10
または、
ドイツ硬度 (°dH) ≒ Ca濃度 (mg/100cm3) × 1.399 + Mg濃度 (mg/100cm3) × 2.307
この計算式は、CaOの式量56.077を用いて、アメリカ硬度の場合と似た要領で、下図のように導けます。
もしくは下図のように、1Lでなく、100cm3の水の含有量に着目すれば、より簡略化された計算式にもできます。
アメリカ硬度とドイツ硬度とを相互に変換する計算方法
水の硬度は、アメリカ硬度とドイツ硬度の一方が分かれば、もう一方も計算可能です。両者を換算するための計算式(簡略式)を以下に示します。
ドイツ硬度 (°dH) ≒ アメリカ硬度 (mg/L) ÷ 17.85
または、
ドイツ硬度 (°dH) ≒ アメリカ硬度 (mg/L) × 0.05603
アメリカ硬度 (mg/L) ≒ ドイツ硬度 (°dH) × 17.85
または、
アメリカ硬度 (mg/L) ≒ ドイツ硬度 (°dH) ÷ 0.05603
計算式から分かるように、アメリカ硬度とドイツ硬度の値の比は、約17.85倍です。アメリカ硬度が17.85mg/Lの場合に、ドイツ硬度がほぼ1°dHになります。
これらの計算式の導き方も解説しておきます。
アメリカ硬度とドイツ硬度はどちらも、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計濃度(物質量/体積)を、カルシウム化合物の濃度(質量/体積)に換算して表現したものです。その意味では、両者は本質的に同じ概念です。
ただし、同じ水の硬度を表す場合でも、両者の値は異なります。下表のように、換算する化合物の種類と、単位が異なるためです。
- アメリカ硬度とドイツ硬度の違い
-
硬度の種類 換算する化合物 単位 アメリカ硬度 炭酸カルシウム
CaCO3
(式量:100.087)mg/L ドイツ硬度 酸化カルシウム
CaO
(式量:56.077)°dH
(10mg/Lを
1°dHとする)
こうした違いを考慮すれば、2種類の硬度を相互に換算可能です。計算式の導き方を、2枚の図に示します。
まとめ・参考資料と文献
水の硬度は、水に溶けているカルシウムイオンとマグネシウムイオンを合計した、物質量/体積の濃度を表しています。その表し方には主に、アメリカ硬度とドイツ硬度があり、違いは換算する物質や濃度の単位です。
硬度の計算には一般に、簡略的な計算式が用いられますが、その計算式は、原子量や式量を用いれば導けます。
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