酢のpHはいくつ?食酢の酸性の強さ・料理での働きを紹介
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お酢は酸性の調味料です。pHの値は2台後半~3前後のものが多く、最もポピュラーな穀物酢なら、pH2.7程度が目安です。
この記事では、5種類の食酢のpH測定値を公開しています。
5種類の酢のpH値(実測値を公開)
食酢は「酢酸」という酸を4~5%程度含む、酸性の調味料です。酢のpHの値は2台後半~3前後で、食酢の種類によっても差があります。
ミツカンの「穀物酢」「米酢」「純玄米黒酢」「りんご酢」「白ワインビネガー」の5種類の食酢を用意し、pHを測定しました。測定値を表にまとめています。
- 酢のpH(実測値)
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酢の種類 酢のpH(実測値) 穀物酢 2.71 米酢 2.89 純玄米黒酢 3.23 りんご酢 2.68 白ワインビネガー 2.61 pHの値が小さいほど、酸性が強いことを示します。
最も安価で一般的な「穀物酢」のpHは、2.71でした。一般的な酢のpHは2.7程度と覚えておくと、よい目安になるでしょう。
「米酢」と「純玄米黒酢」は、それぞれpHが2.89と3.23であり、穀物酢よりも弱い酸性でした。これらの酢では、豊富なアミノ酸などの成分がpHをいくぶん中性寄りに傾け、穀物酢よりも酸性が弱くなります。
一方、「りんご酢」と「白ワインビネガー」のpHはそれぞれ、2.68と2.61であり、穀物酢よりわずかに高い酸性を示しました。これらの酢には、クエン酸やリンゴ酸、酒石酸など、酢酸よりも強い酸性を示す有機酸が多少含まれます。
pH(ピーエイチ)とは、水溶液の酸性~中性~アルカリ性といった液性を数値化した指標です。ちょうど中性では、pHが7になります。7より小さいと酸性であり、大きいとアルカリ性を示します。
pHが1変化するごとに、液性を決定づける「水素イオン(H+)」の濃度は、10倍変化します。例えば、pHが3の水溶液に比べ、pHが2の水溶液では10倍の濃度の水素イオンが存在します。
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酢を薄めた時のpHは?
ミツカンの穀物酢を、水道水で5倍と10倍に薄めた場合のpHも測定しました。希釈には、メスピペットとメスフラスコを用いました。
- 薄めた穀物酢のpH(実測値)
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穀物酢の希釈倍率 pH(実測値) 原液 2.71 5倍 2.95 10倍 3.06 メスピペットで2.5mLと5.0mLの穀物酢を量り取り、それぞれ25mLのメスフラスコで水道水により希釈。
穀物酢の原液のpH2.71に対し、10倍希釈では3.06となり、pHの上昇幅は0.35でした。酸性の強さを決める水素イオン濃度の変化は、100.35と計算すると、およそ2.24分の1にしか薄まっていません。(もし10分の1に薄まれば、pHが1上昇します。)
10倍希釈しても水素イオン濃度が大きくは変化しないのは、酢酸のような弱酸は、薄まるほど水素イオンを離す分子の割合が増えるためです。
料理においては、酢の匂いや酸味がキツくない程度に薄めて使っても、比較的低いpHが維持されやすいことを意味します。この特性が、酢を使った料理・食品の保存性向上に役立っています。
酢の酸性(低いpH)の効果は?料理での働き3つ
酢を料理や食品に使えば、pHの低い酸性の状態にできます。この章では、酢の酸性が料理や食べ物にもたらす3つの働きを紹介します。
酢によるpH低下の効果①酸味がつく🥒
「酸味」は、pHが低い、酸性の食べ物に対して感じる味覚です。
酢を特徴づける酸味は、洋の東西を問わず、古来から様々なレシピに重宝されてきました。酢を使って調理すると、料理を食べる人に次のような効果をもたらします。
- 酢の酸味の効果・作用
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- だ液の分泌を促す
- 食欲を増進させる
- 塩味や甘味を引き立てる
- 脂っこい食材をさっぱりと仕上げる
酢による食欲増進は感覚的に分かりやすいですが、塩味を引き立たせる効果にも注目したいところです。
料理に酢を活用すると、少なめの塩分でもしっかりと塩味が感じられるため、健康的なメニュー作りにも活用できます。
酢によるpH低下の効果②食品の保存性が増す🍣
料理や食品に酢を使うと、pHの低下により微生物の活動が抑えられ、食品の保存性が向上します。
具体的な基準としては、わずか0.1%の酢酸溶液が、大半の微生物の活動を抑制しますこれは、水500mLに対して食酢10mLを加えた程度(約50倍希釈)の酢酸濃度です。
寿司は、酢の食品保存効果を利用した代表的な料理です。冷蔵技術のない江戸時代でも、ご飯を酢飯にすることで、江戸の庶民は比較的安全に寿司を楽しめました。
酢によるpH低下の効果③タンパク質が変性する🐟
低いpHの環境下では、食品に含まれるタンパク質が変性します。変性とはタンパク質が構造変化することであり、タンパク質の機能も失われます(失活)。
タンパク質の変性は、料理では日常的な現象です。加熱調理で肉や魚の透明感がなくなったり、卵が固まったりする現象は、タンパク質の熱変性によります。
食材を酢で締めると、加熱なしでタンパク質の変性を起こせるのです。料理では、酢によるタンパク質変性がよく利用されます。
- 酢によるタンパク質変性を利用する調理例
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- シメサバ
- 野菜の変色防止
生のサバの身を酢締めすると、タンパク質の変性により表面が不透明になるほか、タンパク質分解酵素が失活して働かなくなります。
いわゆる「サバの生き腐れ」は、サバに元々含まれるタンパク質分解酵素による自己消化が主な原因です。酢締めにしたサバは、タンパク質分解酵素が不活性化し火を通さずとも傷みにくくなります。
生のサバは非常に美味しいものですが、シメサバは火を通さずにサバを食べたい先人の知恵と執念が生み出した料理といえるでしょう。
酢には、酵素による野菜の変色を防ぐ効果もあります。切ったレンコンやゴボウ、ヤマイモは、薄い酢水にさらすと褐変を防ぎ白く仕上がることが知られています。
これは、クロロゲン酸や没食子酸などのポリフェノールを酸化して褐色にする「ポリフェノールオキシダーゼ」という酵素が不活性化するためです。
まとめ・参考文献・測定に関する補足
酢はpHが3より低い程度の、酸性の強い調味料です。料理を美味しく食べるための酸味付けをはじめ、食品を保存したり下ごしらえに使ったりと、広い用途を持っています。
先人の知恵が作り出した酢を上手に活用すれば、食生活を少しだけ豊かにする、名脇役となってくれるでしょう。
補足:pH測定について
pH測定には、ラコムテスター製のポケットタイプpH計「pHTestr®30」を、測定直前にpH 6.86, 4.01, 9.18の3点で校正して使用しました。
各測定では、洗浄した電極をそれぞれの酢で共洗いした後に、ディスポーザブルカップに入れた酢に電極を浸して測定しました。